2017/10

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昔ぼそぼそ描いていた漫画です。
ヒューマノイドの温厚な郵便屋ソリタが、政府銀河定期便で
人が訪れないような辺境の星の、偏屈な人々に品物を届けたり
配達の依頼を受けたりするような感じの話です。

この時勢、ヒューマノイドは自分で働いて電源を買って生きているので
自分の食い扶持を稼ぐ人間達とほとんど生活様式が一緒です。
ちなみに郵便屋ソリタはフリークスラウンジのジューンの下敷きになった
キャラクターですが、性格は正反対です。
彼は働きながら人間の体のパーツを少しずつ買い集めている途中で、
いずれは完全な人体になりたいと思っています。
某銀河鉄道アニメと反対のテーマを少し匂わせてあります。
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1、渇の星
からからに渇ききった大地が広がる星で、ソリタは依頼人のもとへ急いでいた。ステーションからの距離は一昼夜。しかし途中で同行した年老いた案内人が熱中症で倒れてしまう。次の休憩所までは3km、案内人を背負って歩くソリタは出会った砂の民に水を請う。砂の民はそれを拒み、早く自分の仕事を遂げるようにソリタに告げて足早に過ぎ去ってしまう。仕方なく彼はそのまま休憩所へ向かい、案内人を休ませる。運よく休憩所には貯蓄の水があり、案内人は一命を取りとめた。

案内人をそこに残したまま、翌日ソリタは依頼主のもとへ荷物を届けに出る。依頼主の館は地下から水をくみ上げているため、水に困る様子はなかった。ただ、その水にはある種の毒気が含まれており、ソリタの運んだ荷物はその毒気を消すための薬だった。薬を配合した水は青く変色する。
ソリタはある事実に気づく。休憩所の水は透明であり、その薬品は使われていなかった。そして、砂の民の持つ水もまた、透明だったのである。
急いで休憩所へ戻ると、案内人は衰弱していた。ソリタは砂の民が水を分けなかった理由を知る。砂の民は彼ら独自の遺伝子を持ち、水の毒性に少しは耐えられるのであったが、案内人にはその耐性がついていない。彼らはそれを知っていたから、水を分けず、安全な水のある館へ急ぐように言ったのだ。
死の間際、案内人はソリタに、君は機械の体を捨ててまで、本当にこんなに脆い生の体が欲しいのかと問うた。ソリタは返すべき答えが見つからず、黙っていた。案内人は死に、ソリタはその遺体を抱えてステーションへ戻るのであった。


2、雪の星
一面雪に閉ざされた大地にある星から依頼があった。元は灯台であった建築物に住む、一人の灯台守からである。彼は年老いて、既に死病に冒されていた。何年も前に自分の唯一の血縁である孫娘と喧嘩をして、彼女は遠い遠い外縁の星に住んでいる。自分が死んだ時、速達で死去を知らせて欲しい、と灯台守は言うのであるが、雪の星から孫娘の星までは電報でも一ヶ月はかかる距離がある。
年老いた彼はさらに、孫娘が来るまで玄関の戸が埋もれてしまわないよう番をしていて欲しい、と願い出た。ソリタは業務の内容ではないと断るが、すると灯台守は一通の手紙を書いた。それをソリタの手に握らせ、ここへ訪れるはずの孫娘に届けて欲しいと依頼する。契約を交わした以上ソリタは留まらざるを得なくなり、距離ではなく時間を越えての配達業務が始まる。
間もなく灯台守は死去し、ソリタは一人で灯台で暮らした。日に1回雪を除けて電力を供給する以外何もすることがなく、ソリタは老人の部屋や灯台の各階層を覗いて回った。かつて老人が過ごした部屋にはいくつもの絵画が溢れていた。老人が描いたものである。ソリタはそれを眺め、見真似で絵筆を取るが、彼の手は図画チップの規格にはまった正確な写し絵しか描けなかった。楽しいとも思えず、かと言って他にすることもなく、彼は黙々と雪かきとそれを続けた。
何のために生きるのか、何のために動くのか。ヒューマノイドである自分のここでの生活と孤独に死んでいった灯台守の生活、重ね合わせて足りないものは何か。人間と自分、違うものは何か。ソリタは三ヶ月半、それを考え続けた。
孫娘がやってきた時、彼女は彼の様子が死人のようだと言って笑った。人工の体に変化はないし、彼の所作の何が異常なわけではない。彼にはその言葉の意味が解らず、無事手紙を配達し終えた事を確認し、本社へ戻るのだった。

久々に本社の気の知れた仲間と会い、街の友人達と会い、彼は心が軽くなるように感じた。彼は気づく。灯台守が何故、そこへ留まることを願ったのか。彼はたった一人の孤独な死が寂しかったのだ。誰か見取るものが側にいて欲しかったために、ソリタを灯台に留めておいたのだ。
人間は一人ではいられない生物なのだとソリタは認識する。では、ソリタ自身はどうであったのか。灯台で孫娘の言った死人のようだという言葉、それはヒューマノイドも一人でいると塞いでいく、そういうことだったのだろうか。人間もヒューマノイドもその点は似ているのだろうか。ソリタは考え続ける。


3、魂の星
ソリタは次の仕事へ向かうために定期便で旅を続ける。運悪く流星群に足止めをくらった彼は、近くにあった「魂の星」に滞在を余儀なくされる。
魂の星では、肉体を不浄なものとする文化が根付いている。その小さな星の住人たちは皆肉体を持たず、「巣と道」と呼ばれるラインの中に住んでいるのだった。そのラインは縦横無尽に張り巡らされ、幾多の機械類によって存続していた。
定期便に乗っていた乗客のうち、人間はその星の生物用宿泊施設以外を出歩くことができない。それは法によるものでもあったし、事実上空気がないからでもあった。
ソリタや他のヒューマノイドは規制を受けることなく外を出歩くことができた。住民たちはヒューマノイドは歓迎した。最初から肉体を持たず生まれ、必要とあらばラインの内部にアクセスすることもできる、自分たちに近い存在として受け入れているのである。
ソリタは住人の一人、アキィの「巣」へ招かれる。ソリタは回線を通してラインに潜入し、アキィの巣へ向かう。
アキィは星の住人であるが、肉体に憧れを持つ魂だった。魂は外観は勿論性別も年齢も持たず、外界へ触れる術を持たない。アキィはその無味乾燥な人生に絶望し、かりそめの体でも構わないから自分の目で見、手で触れ、足で歩きたいのだという。そのかりそめの体を捨て、肉体へ移動したいという願いを持つソリタはただ黙っていた。しかし、プロテクトの弱いソリタの回線から、その情報はアキィへと伝わってしまう。
アキィはソリタを羨む。体を持っているのに、更に別のものまで欲するのかと。アキィはソリタの回線をダウンさせ、ソリタのボディを乗っ取ろうとした。気づいたソリタは必死でそれを止めようとする。

流星群の衝突で停電が起きる。瞬間的にソリタの意識はブラックアウトし、気がついた時には元の体の中だった。アキィら魂がどうなったかは解らないが、再びアクセスする勇気もなくソリタは逃げるように定期便へ戻った。
運航が再開されてしばらくして、隣の老爺にその話をすると、彼は笑った。ソリタが魂の星で体験した情報は全て遥か昔の幻影に過ぎない。もしくは、コンピュータの中でだけ蠢き続けるプログラム達の幻影。元々の星の住人は普通に肉体を持っていて、大気汚染によりとうの昔に逃げ出し、主人に捨てられ残されたホストコンピュータがいつしか主である人間のダミーを自分の内部に作り、そのまま自分の存在意義を満たすためだけに遊びを続けているというのである。
ソリタは嘘だと言った。アキィが体を欲した、その感情の奔流は機械にはあり得ない強い執着を持っていたからだ。すると老爺は嘘ではない、私自身があの星を捨てた者の一人だから、と言って笑った。

寝てしまった老人を横目に、ソリタはアキィの事を考えていた。ボディを欲しがったアキィ、ひょっとするとそれはホストコンピュータそのものの魂だったのではなかろうか。主を失った人工知能は仲間を作り出してひとり遊びを続けていた。けれども、増殖した「住人」の幻想はどれもコンピュータ内部のプログラム、いわば只の分身に過ぎないのだ。肉体を嫌い、人間などいらないと強がっていたけれども、おそらく人工知能は孤独に耐えかねて外界に出たかったのだろう。ソリタは思う。
その時ソリタは、記憶野の隅にプロテクトをかけられた情報を見つけた。パスを施されたそれにはアキィからの付記コマンドがあった。かつての本物の住人に出会ったら、それを書き出して渡して欲しい、と。書かれているのは恨み言か、ウィルスか、はたまた親を思慕する文面か。ソリタには伺い知ることができない。
図らずも託された郵便物を書き出したチップを眠る老人の前に置き、ソリタは一体誰に料金を請求するかを考えあぐねるのだった。


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