2017/08

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キルチェを軸に置いたストーリー。
彼女の行動は特に他の人員からの制約を受けない。
2−1より重要な選択肢として食事が現れる。

・自らの嗜好に引け目を感じるフリークスが多いなか、キルチェ・トワ・アンジェラは基本的に後ろ暗い感情のないフリークスである。
彼女の明るさは真性のものであり、自らの立ち位置を勝利者の側だと確信している。何故ならば彼女は、他の一般の人間に比べて本当に自らの好きな事を叶える手段を持っているからだ。

・彼女に父親はなく、母親は下町でスナックを経営している。ただしその母親も実の母ではない。年若いその継母との軋轢は多く、仕事と学校の時間帯の差異ですれ違いも多かった。たまに彼女が家にいても顔を合わせることは少なかった。
ハイスクールに入学するまでの彼女は素行の悪い不良娘のそれだった。ただし、何をやってのけてもどこか満たされない感情を常に抱き、その年齢にしては冷めた子供であった。

・ハイスクールに入学すると彼女は音楽を趣味としはじめ、自分が本当に好きなものを見つけたのだという感慨に耽る。その時の彼女はまだ自分の渇きに気付いていない。ただ、ライブハウスなどの繋がりで、MMR−MURという青年の名を知ることになる。彼は衝撃的なコラージュ映像を主とした作品をライブハウスやクラブに提供するクリップアーティストだった。
彼女はその猟奇的なクリップに惹かれ、アングラに興味を持つようになる。MMRのクリップは実際に人間を傷つけたような奇妙な現実味があり、その筋の人間には受けが良かったが、しばしば規制の対象にもなった。

・彼女の卒業前にMMR−MURは姿を眩ます。軍事当局に徴兵されたという噂が広がり、誰もが逃れられない戦争という嵐を前にして、キルチェは社会の枠組みを嫌悪し軽く失望する。

・やがて卒業を迎えた彼女だが、当然進学や将来の事など何も考えていなかった。彼女の母はいずれにしても進学の費用を出すとは思えなかったし、キルチェはそもそも就職して真人間として働けるような娘ではなかった。しかし楽観的な彼女は知り合いに頼み込んでアルバイトをしていたライブハウスの仕事をそのまま続けようと思い、特に将来に何の不安も持っていなかった。

・そして卒業旅行、それが彼女の運命を決めた。クラスの何人かでスキーに行った帰りの飛行機が雪山に墜落し、かなりの数の人間が死んだ。彼女らは運良くほぼ無傷だったが、食料などは勿論何も無い。彼らは何日も救助を待つ間、飢えて死ぬか人間の肉を食うかという段階にまで追い詰められた。そんな折キルチェは躊躇い無く人の肉を口にし、周囲の人間の顰蹙を買った。肉を口にしたとき彼女は一瞬でその味の虜になる。ただの表層的な蛋白質の味だけでなく、その非人間的な背徳の味の虜になったのである。
やがて救助の手が届き、彼女らの遭難事故は軽くニュースになり、キルチェはまたもとの日常に戻ってしまったことを嘆いた。音楽もクリップも、最早彼女を助けてくれはしなかった。

・戒厳令が出回るころ、ライブハウスも規制の対象になりつつあった。彼女の働いていたライブハウスも少しずつ圧迫されてゆく。そんな折、キルチェは軍のとある小隊が雪山で遭難し、人間の死肉を食って生還したというニュースを見た。それこそがMMR−MUR本人であったのだが、キルチェは勿論知る由もない。MMRの行動は単なる偶然ではなく、先だってのキルチェらの遭難事故の影響を受けてのことだった。
キルチェは一抹の希望を見たように生き返り、その次の日に荷物を纏めて入隊の旨を母親に告げる。母は娘のおかしな本気を見て取り、死ぬ前に帰ってくる事を約束に彼女を送り出した。

・軍の面接官は狂った入隊志望動機を堂々と述べたキルチェに呆れたが、その熱意と人員不足によりフリークスラウンジに配属する。そしてキルチェはそこでかねての羨望の人、MMRと出会う。二人はすぐに意気投合し、常識の枠組みをすり抜けた事を祝福しあうことになる。彼女は自らの恵まれた軌道に感謝し、長い間の渇きを満たされた気持ちでいた。
やがて彼女は隊員の飛龍と親しくなる。彼もまた彼女やMMRのように、自らの所業に対し何の後ろめたさも感じない人間であった。彼女はその流れにそって飛龍やMMRが本当に狂った存在として一目置いている存在、クルツワードともやがて接触を持つようになる。

・そのうちに軍医の枠が設けられ、グラムグナッシュが半ば騙された形で入ってきた。彼はフリークスの中ではかなりどっちつかずの人間であり、キルチェは彼の人間性には親近感は持つものの、そうした態度には内心苛立ちを感じている。
友人としてキルチェは彼をこちら側へ引っ張り込み、その苦悩を無くしてやりたいと思っているが、グラムグナッシュ自身はそれを拒む。仕方なく彼女は友人の一人としてラクに付き合うことにしている。故に、彼の存在は彼女の勝者の人生の中で唯一の暗点である。


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